生きている脳
人の頭から脳を取り出し培養液に漬けて生かすと、どういう事が起こるかを扱った小説。スウェーデンの小説家PCヤシルド氏の著作。PCヤシルド氏は医学博士でもある。原題は「生ける魂(1980)」。
人の頭から取り出された脳はイプシロンという名前がつけられ、水槽の中で飼われる。本書はイプシロンの日常生活が淡々と描かれている。
原著は、今から 28 年前に書かれた物であるから、当時としては、それなりに新鮮だったかもしれないが、現在は似たようなネタの作品が多いため、若干色あせて見えた。また、ストーリーに起伏があまりないため、平坦に感じる。率直に言えば退屈。最後はすんなり終わってしまうため、ちょっと残念である。
本書を読むと医学の発展が人にどのような影響を及ぼす事になるのかを若干は感じさせてくれるかもしれない。 例えば、イプシロンの推定寿命人はよりも長いし、体を制御することに必要だった脳の機能が、体を失ったことにより解放されたため、IQ の向上が描かれている。
しかし、体がないが故に、脳を管理している組織や研究者によって記憶を消されたり、運命を左右されたりすることもあり得る。
このようなシチュエーションを今から約 30 年も前に小説として発表したことは、新規性があったことだと思う。
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