フリーランチの時代 (ハヤカワ文庫 JA オ 6-8) (文庫)
大変面白い SF 小説だった。私としては既刊の『第六大陸』、『老ヴォール惑星』、『時砂の王』の出来に匹敵する。これらの 2冊とはちょっと雰囲気を変えて、コンピュータ・AI・高度先進医療(サイボーグとかナノマシンとか)を題材にする小説。
SF 小説としてはこちらも王道なので筆者がこの題材に取り組むのは楽しみである。
で、楽しみを裏切らなかった作品だった。しかし、読後感は微妙である。なんというか、色々と考えさせられたという感じがする。
- 生きるとは何か
- 生物とはなにか
- 意識とは何か
みたいなことを沸々と。どうにも爽快感は無いね。まぁ、筆者もそれをわかっていてこういう短編の配置にしたのだろうけれども。本書は 5 つの短編小説を集めた短篇集。
- フリーランチの時代
- Live me Me.
- Slowlife in Starship
- 千歳(ちとせ)の坂も
- アルワラの潮の音(ね)
『Live me Me.』 は「感覚で維持される覚醒状態そのものが意識」というお話。でもでも、数学的に定義してくれないと工学的には実現できないかもしれないね。まぁ、それは筆者の仕事ではないでしょうけれども。
『Slowlife in Starship』 は宇宙の便利屋さんみたいな方のお話。AI の要素を味付けに。
『千歳の坂も』はタイトルが素晴らしいかも。
『アルワラの潮の音』は既刊『時砂の王』のスピンオフ。多分、『アルワラ~』を先に読むと『時砂の王』を読みたくなるでしょう。先に『時砂の王』を読んでからだと、なぜこの短編を本書の最後に持ってきたかなぁ~と思うかもしれない。なぜこの配置にしたのでしょうね。『アルワラ~』は書き下ろしですからね。意図は何でしょうね。ちょっと気になる。
どちらにせよ、定価 660円 + TAX の価値はありそうだ。
フリーランチの時代
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