エクサバイト
「ユニット」と呼ばれる小さなカメラを身につけ、日常生活を全て記録することが出来るようになった 2025年。「ユニット」を用いて作成した美術番組シリーズを手がけ成功したプロデューサの元にエクサバイト商會という会社からオファーがあった。
エクサバイト商會は「ユニット」装着者の死後にそれを収集し動画の世界史を編纂したいという大プロジェクトを考案していた。一方、「ユニット」のメーカーである「グラフィコム」も同様のプロジェクトを開始したことで混乱が始まるという SF 小説。
エクサバイト | 服部真澄 に著者のインタビューも公開されている。
本書では記録の近未来を扱っている。記録方法が進化すれば、プライバシーの問題や真贋の判定などの問題が今後起きてくるだろう事を提起している。現在でも、画像の加工技術は進歩しており、写真のレタッチは日常的に行われている。グラビアではレタッチが行われていないものを探した方が難しいかもしれない。例えば、色の調整やほくろの除去などである。そんな技術は今後より進歩して、本書が描かれた時代では人が判定することがさらに難しくなっているとしている。
攻殻機動隊という漫画/アニメでも同様の問題は取り上げられていて、「画像には証拠能力はない」という台詞がある。
また、大量の動画像から重要な部分を高速に見つけるにはどうしたらよいかという問題も扱っている。何も考えないと、2 年間録画したら、再生するのに 2年間かかってしまう。早送りしたとしても非常に時間がかかる。そのため、不必要な部分を如何にスキップし、価値のありそうな、重要そうな部分を何とか効率的に検索し、その部分だけ見たいという要求が生まれる。本書ではこの問題も触れられていて興味深い。
多分、今後技術が進めばそうなってくるんだろうなぁと感じさせる。とても面白い小説だった。ちなみにエクサバイトとは 1,000,000,000,000,000,000 のことで、100 万テラバイトのことである。2008 年 11月の時点では 1 テラバイトのハードディスクが 1 万円程度で購入できる。
尚、本書は岐阜新聞・朝刊(平成18年6月7日~平成19年2月1日)、日高新報に掲載された小説をまとめたものである。
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