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プログラマーのジレンマ 夢と現実の狭間

プログラマーのジレンマ 夢と現実の狭間

プログラマーのジレンマ 夢と現実の狭間

  • 作者: スコット・ローゼンバーグ
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2009/05/21
  • メディア: 単行本

本書は、Chandler という PIM の開発にまつわるドキュメンタリー。原題は「Dreaming in Code」。

本書の「売り」は「如何にソフトウェア開発が難しいのか」を、Chandler という実例を挙げ、著者自ら開発者と共に過ごして取材・観察し、日本語にして約 500 ページの本としてまとめたことである。

著者が Chandler の開発の初期から取材できたのは、開発の一部始終を記録することが出来たという意味で幸運なことだろう。もっとも、Chandler が「完成」したのかは判断しかねるし、「終」がどうなるかはまだ分からないがが...。 

PIMとは 【Personal Information Manager】 - 意味/解説/説明/定義 : IT用語辞典 から一部引用すると、

住所録やスケジュール、メモなどのプライベートな情報を管理する個人向けのソフトウェア。電子メールなどの付加機能を持ったものや、これらの各機能を連携させることができるものもある。

と説明されている。

このような PIM の一つが Chandler である。開発元は Open Source Applications Foundation (OSAF)で、オープンソースとして提供されている。誰でも自由に無料で利用することができ、Chandler Project - Welcome からダウンロードできる。

OSAF は事実上、Chandler の開発のために作られたような財団であり、創設者はロータスデベロップメント設立者であるミッチェル・ケイパー。Chandler の開発に関わったのはマイクロソフト、エキサイト、ネットスケープ、アップルなどで実績を積んだ蒼々たるメンバー。

そんな「ドリーム・チーム」が資金も時間もあるという、それなりに理想的な状況で Chandler を開発し始めたのだが、ソフトウェア開発によくあるように、仕様は決まらず、スケジュールは遅れに遅れ、最終的にとりあえず形になったものは、初めの理想からは外れたものになってしまった。そんな事が時系列順に単年にまとめられている。

本書では 人月の神話―狼人間を撃つ銀の弾はない が度々引用されるが、OSAF も今のところ「銀の弾丸はない」を見つけることは出来なかったようだ。


結局のところ、本書の最初に The Art of Computer Programming の著者、ドナルド・クヌース氏の言葉、

ソフトウエアは難しい。

が引用されているけれど、この言葉が全てを語っているような気がする。

ところで、本書ではソフトウェアに関する幾つか本が紹介されている。幾つか挙げておく。

また、著者を悩ませた『サロン』の同僚が2000年に開発したコンテンツ管理ステムは Bricolage CMS -- Open-source, enterprise-class content management. から入手可能(本書ではオープンソースプロジェクトになったことは言及されているが、URL は掲載されていない)。

本書、p.441 には、

アラン・ケイは、よくマッカーシーの「LISP1.5のマニュアルの13ページにある半ページ分のコード」に触れ、それを「コンピューティングのマクスウェル方程式」と讃えている。(中略)

ケイが取り上げたページは、「eval」と「apply」という二つの関数の定義だが、マッカーシーはここで、LISPの説明をLISPで的確に書き表している。「この片手で覆えるほどの身近い行数に、プログラミングの世界のすべてがある」とケイは言う。

という下りがある。 ここで言及されているマニュアルは、History of LISP — Software Preservation Group の John McCarthy, Paul W. Abrahams, Daniel J. Edwards, Timothy P. Hart, Michael I. Levin. Lisp 1.5 Programmer's Manual. MIT Press, Cambridge, Massachusetts, 1962 から PDF でダウンロード可能。

Posted here by permission of The MIT Press.

とあり、許諾を受けているようだ。 MIT Press は気前がいいねぇ♪

他に参考になったものは、

などなど。

本書は、

  • ソフトウェアの開発に関わる人
  • ソフトウェアの開発を依頼する人
  • ソフトウェアに要望がある人
にとって読んでおいて損はない本だと思う。
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