Grails徹底入門
本書は 2009/06/20 時点で日本語により Grails を解説した唯一の書籍である。
Grails とは Ruby on Rails (RoR) を参考にして作成されたフレームワークである。RoR の使用言語は Ruby であるが、Grails は Groovy を用いる。Groovy は Java 言語と非常に親和性の高いスクリプト言語であり、Ruby や Python などを参考にして作られた言語である。Groovy は JVM 上で動作し、Groovy でのオブジェクトと、Java でのオブジェクトはほぼ同一である。Groovy から Java 言語のオブジェクトを透過的に扱える。これは JVM で動作する JRuby にすらない大きな利点だろう。
Ruby も Groovy もクロージャと呼ばれる機能や、メソッド、プロパティを動的に生成する機能を持っている。RoR や Grails はそのような機能を活かして効率よくプログラムを作成しようとするコンセプトを持っている。
本書の簡単な目次を著者の一人である山 田氏のページで見ることができる。Groovy の基礎から Grails の導入、Grails によるプログラムの開発、パッケージング、プラグインの開発など、一通りの内容を網羅していると言えるだろう。
また、本書ではショッピング カートを持ったサイトの作成を例に取り上げているが、ここで、いわゆるアジャイル的な手法を採用している。Grails はその様な開発に適しているかもしれないが、Grails 自体を学ぶ目的としては、若干、冗長な記述であるかもしれない。
2008/08/25 初版の本書であるが、2009/06/20 時点では内容が古い部分もある。Grails / Groovy は現在のところ比較的活発に開発が行われており、仕様が拡張されている。このため、内容が古い部分は、書籍の宿命であるとは言える。
例え ば、テストに関する記述は、現在の Grails では mock と呼ばれるオブジェクトを利用しなければダイナミックメソッドが利用できない。また、本書で紹介されている Acegi プラグインもバージョンが古い(とはいえ、最新の Acegi プラグインは Web 上の Acegi プラグイン公式ページのチュートリアルに従っても動作しない...orz)。
本書を読まれる際には、 Grails User Guid ver.1.1 [PDF] や IBM developerWorks の Groovy と Grails の連載 を参考にされるとより理解が深まるし、mock などの変更点にも手間取らずにすむと思う(私は知らなかったの手間どった...orz)。
結論としては、若干、内容が古い部分もあるが、 Grails を一通り学びたいのならば読んで損はない書籍だ。
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