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アイの物語

アイの物語

アイの物語

  • 作者: 山本 弘
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2006/06
  • メディア: 単行本

文庫版もある。

アイの物語 (角川文庫)

アイの物語 (角川文庫)

  • 作者: 山本 弘
  • 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
  • 発売日: 2009/03/25
  • メディア: 文庫

本書は 7 つの短編をまとめ 1 つの長編に仕立てた作品である。7 つのうちの 5 つは雑誌に単独で発表された作品であり、一見、短篇集な感じもするが、短編と短編の間に挿入されたインターミッションと残り 2 つの書き下ろし作品により、見事に 1 つの長編にまとめられている。各短編は次の通り。

  • 宇宙をぼくの手の上に、「SFジャパン」2003年冬号
  • ときめきの仮想空間(バーチャル・スペース)、 「ゲームクエスト」1997年5月号
  • ミラーガール、「SFオンライン」1999年3月29日号
  • ブラックホール・ダイ バー、「ザ・スニーカー」2004年10月号
  • 正義が正義である世界、「ザ・スニーカー」2005年6月号
  • 詩音が来た 日、書き下ろし
  • アイの物語、書き下ろし

筆者の山本氏は自身でウェブサイトを開設しており、アイの物語につ いての解説レビューの一覧 などを公開している。作者自身が素晴らしい解説をなさっているので、本ブログではストーリーについては記載せず、気がついたことをつらつらと書く。

書 き下ろしの「詩音が来た日」に登場する歌は次のアルバムに含まれており、作詞 松本 隆、作曲 平井夏美で松田聖子が歌う「瑠璃色の地球」である。ちなみに2009/08/23 の時点では iTunes に松田聖子氏の歌う「瑠璃色の地球」は無く、中森明菜氏のバージョンがある。えぇ~めんどくさい。ソニーが版権をもつ曲は iTunes には...。ちなみに mora ならオンラインでデータを購入できるようだ。

SUPREME

SUPREME

  • アーティスト: 松田聖子
  • 出版社/メーカー: ソニーレコード
  • 発売日: 1995/03/08
  • メディア: CD

同じく「詩音が来た日」に登場する「Klaatu barada nikto.(クラートゥ バラダ ニクト)」というパスフレーズは、映画「地球の制止する日」でロボットを停止させるためのパスフレーズから取られている。

ネ タがよく分からなかったのは同じく「詩音が来た日」の次の一節、

作中で「アンドロイドを『マ』のつく名前にしろって強硬に主張するんですよ。そんなの版権の関係で無理ですって。ねぇ?」

「アンドロイド」で「マ」の付く名前が多いのでどれを意図したものかよく分からなかった。マリアかな?もっともマリアにしても作品の候補は多そうな ので...

同作の

「以前読んだ本に、紀元前30年頃のパレスチナにいたヒレルというラビの言葉が載っていました。ある時、異邦人がやって来て、 『私が片足で立っている間に律法のすべてを教えてください』と頼みました。ヒレルはこう答えました。『自分がして欲しくないことを隣人にしてはならない。 これが律法のすべてであり、他は注釈である』-
というネタはどの本に載っているのかよく分からない。キリストも似たようなことを述べているようで...

 

書き下ろしの「アイの物 語」に出てくる「ミラボー・ドライブ」は ラ イトクラフト - Wikipedia に解説がある。「ライトクラフト」と呼ぶ方が知られているのかも知れない。

インターミッ ション及び「アイの物語」に登場し作中の鍵を握る「アイビス」の名前の由来は作中でアイビス自身が次のように語っている。

アイビスというのは A・E・ヴァン・ヴォートという作家の『地には平和を』という短編に出てくる宇宙植物よ。

A・E・ヴァン・ヴォクト邦訳 作品 によると

The Harmonizer

Astounding, Nov 1944

    * 地には平和を(南山優<大山優>訳)
          o SFマガジン(1962年9月号)
          o 『拠点』(早川書房, ハヤカワSFシリーズ, 1965.05)
    * 平和樹(沼沢洽治訳)
          o 『時間と空間のかなた』(東京創元社, 創元SF文庫, 1970.12)

と記載されている。調べて見たところ 「拠点」よりも「時間と空間のかなた」の方が入手しやすそうである。私の地元の某公立図書館には「時間と空間のかなた」は蔵書されていたので貸し出し予約 を...。

 

長々と書いたが、内容の濃い作品であり非常に面白かった。 作者は先に述べた作者自身による解説で、

 最初はブラッドベリ『火星年代記』のように、年代順に並べてひとつの歴史にしようと思ったのだが、どう考えても矛盾が出る。 「ときめきの仮想空間」と「ミラーガール」のテクノロジーが同じ歴史上に並ばないのだ。
 考えているうち、「『火星年代記』じゃなく『刺青の男』 にすればいい」と気がついた。謎のキャラクターが少年に物語を語るという形式がいいんじゃないかと。

と述べているが、私もこの形式にして成功だったと思う。山本氏の 神は沈黙せず〈上〉 (角川文庫) 神は沈黙せず〈下〉 (角川文庫) は既読であり、そちらのほんもとても面白かったが、本書はそれに負けていない。どちらかというと SF 色が弱まっている感じがするので SF は余り好きではないという人も本書なら読めるのではないかと思う。

「アイの物語」は 3 年前に出版された本(本ブログの執筆は2009/08/23)であり、1 年以上前に存在は知っていたのだが、これまで読んでいなかったことを悔やむ。もっと前に読んでおけば良かった。

ところで、

お そらく人類という種は地球の重力に縛られ続け、他のたくさんの知的種族の存在も知らないまま、ひとつの星の上で孤独に朽ち果ててゆくのだろう。

と いう台詞が「宇宙をぼくの手の上に」にはあるのだけど、宇宙はそんなに甘いかなぁ。人をほっといてくれるほど と思わないこともない。あと、同作品の

SF は現実逃避? そんなことは言われなくても分かっている。しかし、現実とはそんなに素晴らしいものなのか。直面して生きる価値のあるものなのか。

と いう台詞。これは微妙だな。現実逃避には違いない。読んでる「だけ」では経済的には「ほぼ」何も生み出さないし。現実が素晴らしいものか否かは状況によ る。そんな感じ。


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