審判の日
本書は短篇集である。収録されている短編は次の通り。
- 闇が落ちる前に、もう一度...書き下ろし
- 屋上にいるもの...書き下ろし
- 時分割の地獄...S-F マガジン 2004年4月号
- 夜の顔...書き下ろし
- 審判の日...書き下ろし
著者自身による解説が 山本弘のSF秘密基地 で公開されている。 本書は基本的にはホラー小説らしい。SF 作品を多く手がける筆者らしく、ホラーではあるが、その前提は SF の要素がちりばめられている。
「闇 が落ちる前に、もう一度」はホラー小説と言うよりは宇宙物理学を題材にした SF 小説である。量子力学とかの分野。強いて言えば、「コンピュータの前に座った猿がでたらめにキーボードをタイプしたとしても、十分な時間をかければ、 シェークスピアの作品だって生み出すはず」というようなネタを超壮大にしたような感じ。
「屋上にいるもの」は、ちゃんとしたホラー小説。タイトル通り、「屋上にいるもの」の話。屋上に何が居たのかは呼んでからのお楽しみ。
「時 分割の地獄」 は、S-F マガジンに掲載されたくらいだから、SF 小説なんじゃないかと思って読んだら、やはりそうだった。AI を持つバーチャルアイドルのお話。想像しているだけなら、殺人罪には問えないよね、みたいな。でもでも、人の言う「想像」は AI にとってはシミュレートになり、もし AI に人権を設定するのなら、AI がシミュレートした何かが人と同じように振る舞い人と区別できないのなら、それにも人権を設定するのか?とちょっと思ったけど、それはこの小説の範囲外。
「夜の顔」はかなり純粋なホラー小説。タイトル通り、夜に顔が出てくる話。
「審判の日」はホラー小説というよりはたぶん
SF 小説だな。
世界から、人が居なくなってしまうというお話。ただ、全ての人が居なくなったのではなく、僅かに残った人も居る。消えてしまった人と残った人の違いは何
か、残った人の共通点は何か?が話の重要なキーワードになっているっぽい。ただ、ネタバレしないように詳細は省くが、「YES」と答える人はたぶん、もっ
と多いと思う。このご時世だし。年間数万人が自殺する国ですしね。
正直に言うと、 神は沈黙せず〈上〉、 神は沈黙せず〈下〉 、 アイの物語 の出来が素晴らしかったので期待して読んだのだが、そのレベルには達していない。とはいうものの、つまらないと思うわけではなく、先の 2 作品が傑出していただけの話。本書もそれなりに面白い。
本書で「ホラー小説」であると思ったのは
- 屋上にいるもの
- 夜の顔
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