まだ見ぬ冬の悲しみも (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)
まだ見ぬ冬の悲しみも (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)
- 作者: 山本 弘
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2006/01
- メディア: 単行本
本書は短篇集である。文庫版も存在するが、文庫版ではタイトルが変わり、「七パーセントのテンムー」という短編が追加されている。また、文庫版では前島賢氏の解説「SFとオタクに必要なものの半分くらいは、山本弘に教わった」が収録されている。本書では解説はないが、著者の「あとがき」が 2 ページある。
私は「シュレディンガーのチョコパフェ (ハヤカワ文庫JA)」 は未読。つまり、「七パーセントのテンムー」は未読ということになるが、そのうちに読もうと思う。
「まだ見ぬ冬の悲しみも」に収録されている作品は次の通り。
- 「奥歯のスイッチを入れろ」...書き下ろし
- 「バイオシップ・ハンター」...SFアドベンチャー1990年8月号
- 「メデューサの呪文」...SFマガジン2005年5月号
- 「まだ見ぬ冬の悲しみも」...SFマガジン2005年9月号
- 「シュレディンガーのチョコパフェ」...SFマガジン2005年2月号
- 「闇からの衝動」...ログアウト1995年6月号
著者自身による解説が シュレディンガーのチョコパフェ で公開されている。本書はちゃんとした SF 小説だ。といってもかなり易しめ。あまり SF 小説に興味のない人でも普通に読めると思う。
「奥歯のスイッチを入れろ」は、平たく言えばロボコップみたいな話。ロボットになった兵士は、30 秒だけ音速よりも早い速度で動けるという。この能力はテロ対策のような市街地での戦闘にうってつけだ。しかし、敵にも同じ能力を持つ者が現れて...というストーリー。
「バイオシップ・ハンター」は地球人が銀河系に進出ている未来、地球の輸送船が海賊に襲われるという事件が発生した。様々な状況から「バイオシップ」を持つ異星人に疑いが向けられるが...という話。
「メデューサの呪文」はゲーテル文みたいな話。言葉には「力」があり、人を狂わせてしまう言葉もあるという...
「まだ見ぬ冬の悲しみも」は限定的なタイムスリップが可能になった未来の話。 結局、恋物語か?
「シュレディンガーのチョコパフェ」は、因果律を崩すことができる装置が開発され、世界を壊そうとしている人の話。
「闇
からの衝動」。とある事件に巻き込まれたキャサリンは、犯人のデヴィッドに復讐したいと考える。それも悪魔の力を使って。幸い悪魔に会えそうな場所には心
当たりがある。両親が寝静まった真夜中、 キャサリンは計画を実行するが...という話で、SF というよりは
ホラーとか若干サスペンスが混じっている話。
それなりに面白いけど、ちょっといまいち。
著者はあとがきで筒井康隆氏の言葉を引用している。
筒井康隆氏の名言に「SFはホラ話だと思っている」というのがあります。真面目な顔をしてヨタを飛ばすのがSFの面白さなのだと。
さらに、次のようにも述べている。
こ こで言う「リアル」とは、「現実に近い」とか「現実に起こりえる」という意味ではありません。「ありそうに見える」という意味です。本当にそんなことが可 能かどうかは、SFの本質ではありません。いえ、むしろ現実に起こりえないことを、大真面目に、筋道を立てて、ありそうに見えるように描くのが、SFの面 白さでは無いでしょうか。
このあとがきは MM9 にこそふさわしいと思った。MM9 については MM9 のエントリで述べる。
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