たった1%の賃下げが99%を幸せにする
3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代 (ちくま新書 (708)) の著者の新作。 職能給から職務給への転換を主に主張している。目次は次の通り。
- 第1章 正社員と非正規の間にあるもの
- 第2章 生き残る21世紀型人材像
- 第3章 年功序列は日本社会も蝕む
- 第4章 雇用再生へのシナリオ
本書のタイトル「たった1%の賃下げが99%を幸せにする」は「はじめに」でその理由が述べられている。
現在、もっとも高賃金の45~55歳正社員が、年間受け取る給与総額は約45兆円にのぼる。そのうちたった1%、4500億円を非正規雇用側に分配することで、10万人の雇用を維持することも可能となるのだ。
それにより、本書でも取り上げる少子化問題やニート・フリーター問題などが少しでも解決に向かえば、結果として、賃下げを受け入れた人たちにとっても長期的にはメリットがあるはずだ。それに、年齢・序列にしばられない多様な雇用スタイルは、働く人にきっと自由と幸せをもたらす。
ということで、貰いすぎの人から少ない人へ給与の分配を考えましょうと主張している。そもそも、貰いすぎの人の生産性は非正規雇用されている人の生産性と比べると、その賃金ほどの差は存在しないという理由が前提。
本書の内容を簡単にまとめると、
- 日本の公務員や大企業は未だに年功序列の賃金体系を維持しているが、それは長続きせず崩壊する。
- 年功序列の賃金体系を改訂し、職務に応じた賃金にしなければ企業を維持できない。
- 現在は高給の正社員の賃金を支払うために、非正規雇用された人が結果的に負担している。
- 同一労働、同一賃金へとつながる職務給への転換が必要。
- 現在でも非正規雇用された人は職務給に近い給与体系になっている。
- 序列と報酬を分離することが第一歩。
のようになる。
職務給か。EU のように少しずつそちらへ向かっていかないと、若年層が詐取され続けられ、結果として格差が固定されてしまうかもしれないなとは思う。
尚、職務給が広まれば転職も容易になると思われる。なぜなら、同じ仕事なら給与にそれほど差が付かないから、転職しても経済的なデメリットが発生しないから。ということは、企業としては転職させないように、サービス残業などが発生しないようにするなど、待遇面の改善もなされていくだろう。そうでなければ、転職してしまうから。雇用される側にとっては良いことだ。経営する側にとってはより厳しくなるだろうけど。
あと40年くらい経過すると人口ピラミッドは若年層よりも高齢者が少ない形になるかもしれないが、何も対策がなされなければ、それまで日本は持たないだろう。
これまでは経済が順調に発展してきたから、何とかなってきたけれど、「一度上がった賃金は下げず、上がった者勝ち」 という構造が根本的に無理になってきたというのが、現実的なところかな。
コメント 0